「うちのきよみちゃんは、頭が良くてねー」と、いうのが、母のいつもの自慢の言葉だった。
いや、頭がいい、といっても、実際は小学生の時オンリーのハナシ。
それだって、そこそこ成績良くてまぁまぁ運動も出来て、生徒会なんかもやっていた、というそれなりの優等生だった、というだけ。
中学に入ってからは、音楽に出会い部活に明け暮れる毎日。
もちろん全く勉強しなくなり、成績はどんどん下がり、高校生の時なんて数学は毎回追試、な始末。
にもかかわらず、母の自慢は小学生の頃の娘のそれだ。
わたしとしては、その自慢話を聞くたびにこっぱずかしい思いがしたものだったけど、母が亡くなった今となれば、もっと自慢できることを色々しておいてあげたかったな、と、強く思う。
一時期は、母親と、優等生でなくなったわたしとのバトルがあまりに壮絶だった。
でも、ある意味、親が求める夢から反発することで、それが自分自身の原動力になったような気もする。
そんな母が亡くなってもう6年。
全く実家に帰ってやらなかったくせに、会いたいなぁと時々ものすごく淋しくなる。
今のわたしの年齢のとき、母はどんなことを考えていたのだろうか。
おそらく、趣味でダンスを始めた頃だったんじゃないかと思う。
きっと自分の人生をまた歩き始めた頃だと思いたい。
そして今、母が生きた年齢をどんどんなぞりながら、自分が望む自分の生き方をわたしもあらためて向き合ってみようと思う、寒い朝です。